WORKS

鷺宮の家

改修前

 

 築年数が約50年程の、延べ床面積15坪程度の小さな住宅の大規模修繕の計画です。

 改修前の建物は築50年程度にも関わらず構造体が比較的しっかりとしており、目立った欠陥が見られなかったため、改修にあたっては最低限の構造補強を施すものの、出来るだけ既存の建物の構造を活かした間取りにしようと思いました。しかし、既存の間取りが1階2階とも各々6畳の部屋が2つからなる構成でこれからの生活にそぐわない間取りであったため、既存の建物の外壁と屋根のみを残し、内部を間取りから全てやり変えることにしました。

​ 間取りを検討するにあたって1番心掛けた事は、ご主人の仕事場のスペースと生活スペースをどのように分けるかでした。仕事場には頻繁に来客もあるため、私生活が仕事場に漏れるのは避けたい。
 そこで、1階を完全な仕事スペースとし、2階を生活スペースとする事で公私を分節し、かつそれぞれのキャラクターに応じた空間となるように心掛けました。

 1階の仕事スペースは周辺に対して開かれた印象を持たせるため、建物と道路の境界塀を取り払い、かつ床面を道路面とフラットに繋がるようにしています。さらに道路側に面する建具も全てガラス張りにし、引戸でフルオープン可能とすることでオープン時には周辺との境界が無くなり、お店のような門構えになるようにしています。
 従来の住宅では玄関部分の段差が敷居のような役割を果たし「公」と「私」を分けていましたが、この住宅ではそういった段差が見当たらず開放的なので、仕事スペースが公と私が曖昧な中間領域としての機能を持たせています。
 また、将来親や家族に車椅子が必要となった時には、1階を寝室や介護スペースとして使用することも可能です。道路からフラットでかつ引戸で入れるので、車椅子でも楽にアクセス出来、ご近所からの目も届きやすくなります。在宅介護が必要になると様々な専門職の方の出入りも増えるため、動線的にも1階が適しています。

 2階は開放的な空間となるように柱を取り払いワンルーム空間としました。新しく作る壁は必要最小限にとどめ、平面的な狭さを感じさせないよう既存の建物の天井を取り払い高さを確保することで開放性を確保しています。
柱を取り払った部分はそれを補うように新しく大きな梁を掛け、既存の小屋組との新旧の対比を考慮し、どこか落ち着いた小屋にいるような、そんなインテリアになるように心掛けました。
 また、周囲は建物が密集し隣家からの視線が気になるのですが、屋根を通して空への抜けが感じられる場所でもあります。そこで場所の特性を活かす為、通常は1.1m程度のバルコニーの手すり壁の高さを周囲の窓が隠れる高さとして床から1.4mにしました。
 そうする事で密集地ではありながらも周りの視線を気にする事なく、空へと抜ける明るくて開放的な住まいを実現しています。

DATA
所在地:東京都中野区
竣工:2021年9月
設計期間:2020年7月〜12月
施工期間:2021年1月〜9月
用途:併用住宅(事務所+住宅)
構成:ご夫婦
規模:大規模修繕工事
施工:田村建設
写真:繁田 諭 + ラジコン