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念願のジャン・プルーヴェ展へ

2022.09.27

こんにちは、ラジコンの竹中です。

最近事務所近くのマンションが解体されることになって毎日騒音が鳴り止まずヤキモキしているのですが、よく考えると私も解体等の仕事を依頼した際、周辺の皆さんはこんな気持ちなんだなあと思うと我慢しなきゃなと思います。

自分事になって初めて心情が分かると言うものですね。

先日夏に伸び放題だった事務所前の植物の剪定を行いました。

最近もっぱら植物いじりが趣味と課してきています。枝を切るってなんだか罪悪感がありますが、お陰で少しスッキリ。事務所の中に心地よい木陰をもたらしてくれます。

前置きが長くなりましたが、いよいよ本題へ。

先日、ずっと行きたかったジャン・プルーヴェ展へ行ってきました。

ジャンプルーヴェは20世紀の建築や工業デザインに大きく影響を与えた人物で、スチール等の素材を用いて実験的な仕事を通して、戦後家具から建築といった分野に大きく貢献されました。

ジャンプルーヴェの作品の中でおそらく最も有名な家具が、こちらのスタンダードチェアではないでしょうか?

最も負担の掛かる後脚は太く、掛かりにくい前脚を細くすることで構造的に理に適った形をしています。これは元々プルーヴェが椅子に座るとき、前脚を上げて後ろに傾けて座るスタイルが好みだったらしく、そのためには後脚を頑丈にする必要があったといった逸話もあるようです。

こちらは座面が木で構成されているのですが、座面が樹脂製の比較的リーズナブルなものもあり、それは私の家にも取り入れています。

そんなジャンプルーヴェの大規模な個展が東京都現代美術館で開催中なので早速ご紹介したいと思います。

(こちらでは詳しい来歴や人柄についての記述は控え、展覧会の構成等をメインにご紹介させて頂きます。)

東京の展覧会は日曜祝日は混んでいることが多いので、平日仕事の合間を狙い清澄白河へ。

ウキウキ、ワクワク

胸が高鳴ります。

各ブロックは7つに分かれていて、それぞれ写真撮影もOK!

貴重な展覧会なのに粋な計らいに感謝ですね!

元々金属加工工場を経営していたこともあり、家具の至る所には薄鋼板の使用が見られます。

金属、木、ガラスといった異種素材の組み合わせもジャンプルーヴェの得意とするところですね。

脚の部分が先細りとなるのも特徴の一つ。荷重が地面に伝わりやすく安定感のある構造を生み出します。

その中でも私が気になった家具はこちら↓↓

浮いてる!?

いや違う。脚が目立たない位置に取り付けられています。

普通テーブルの脚は外側に付けられ、内側に収納部分を作る、もしくは箱自体を構造に見立てたりするのですが、これは脚を内側に付けて、天板から木の箱を吊る構成になっています。そのため、横から眺めるとテーブルが浮いた表情になるという、なんとも言えない造形美となっています。

重々しくなりがちなワークデスクを軽やかに見せる仕掛け。

単なる金属加工の工場長に留まらず、デザイナーとしての評価も高い所以は、こういった発想の豊かさに見られるのではないかと思います。

こちらは今や商品化され、知る人ぞ知る照明「ポテンス」の原型ではないでしょうか?現在のものより少し寸胴な印象ですが、面影がありますね。

ここからは椅子に特化したコーナー。

プルーヴェにとって家具のデザインは建物を設計するのに等しく、家具も建築と同じくらい考えることが多いと唱えています。

スタンダードチェアを中心に、特注で作られた椅子がたくさん並べられています。

スタンダードチェアは当初全て木で作られ分解出来るようになっていて、誰でも組み立てられるようにされていたから驚きです。

現在のスタンダードチェアは前脚と後脚は溶接で接合され分解出来無いようになっていますが、これはこれで面白いですね。

こちらのアームチェアもお気に入り。

体が当たるアーム部分は皮やクッションで構成され、構造となる骨組みのみに鋼板を使用しています。人に優しい素材の使い方は流石の一言。

この住宅は1954年の夏場にたったの3ヶ月間で建設された、プルーヴェの自邸です。

プルーヴェがかつて共同経営していたマクセヴィルの工場を去った直後、かつてワイン畑だった南向きの急斜面の土地を購入したのですが、急斜面のため建設は困難だったそうです。しかし豊富な知識と知恵、そして綿密な技術を持っていたからこそ実現出来た住宅です。

 工場の片隅に残っていた材料をどうしたら再利用出来るか?

それを自らの経験から直感を頼りに身近にある道具を使って、断片化した材料をうまく組み合わせることで快適な家に作り上げられました。

 そのため、家を構成する部材はパネル状になっており、手仕事で組み上げられたのが分かるようになっています。

歴史的にも貴重な住宅の一つです。

工業化された外壁パネルや扉の一部が展示されています。デザイン棟は工場で作られた部材を用いて作られた初期の実験的な建物です。

日除け(ブリーズソレイユ)の原寸モックアップ。

アフリカで建設される宿舎のために起用されたブリーズソレイユ(日除け)は、最高気温を更新し続けるこの国の暑さをしのぐ事が出来ました。プルーヴェはこの宿舎のために家具や建築部材をいくつも作りました。

最後の締めくくりは解体、組み立てが容易な建築と建築部材のコーナー。

プルーヴェは1939年にアルミ加工工場建設に必要なプレファブの仮設建築を研究する任務を引き受けることになったのですが、その中で開発されたのがこのポルティーク構造システム。二股の脚(柱)を空間の真ん中に立て、その間に梁を架け渡し、外周を壁パネルで構成するというものでした。

なんと原寸で展示されています!とても分かりやすい!

外壁の一部。

全て工場でプレファブ化され、現地で組み立てるというものでした。

ユニットが建設されていく動画も展示内のipad内で見ることが出来るのでとても分かりやすかったです。

戦後の緊急要請に応えた、プレファブ化。

その工場生産の必要性には説得力があったのか、次々と建設されていきました。

こちらのユニットは水回り設備が一体となったもので中央の円柱型のユニットから梁が跳出す仕様になっております。しかし、大量生産に必要な許可が得られず実際に建てられたのはたったの5棟だけだったそうです。

そしてトリを飾る展示がコチラ↓↓

ピエールジャンヌレとの共同によるF8×8 BCC組立式住宅の原寸ユニットです。今回の展示のために特別に組み立てられたそうです。

窓のディテールも当時のまま。

戦後間もない頃に復興の銘を打って研究、開発されたユニット住宅。その功績に感無量です。

ざっとですが展示の流れを順を追ってまとめてみましたがいかがだったでしょうか?

如何せん筆無精なもので分かりにくかったと思いますが、一見の価値ありなので気になった方はぜひ一度足を運んでみてください!建築や家具に興味がない人でもきっと楽しめるはずです。

では!